Art Direction : Koji Shiouchi(Cattleyatokyo)
Graphic Design : Yuka Shiga / Takumi Kasaki / Seiya Miyazaki(Cattleyatokyo)
ジュべナイルホールロールコールデザイナーの入江は、復刊のプロジェクトで『踊るミシン』と出会った。物語を読んでみると、登場人物たちは入江と年代を同じくし、当時存在していたお店が地元の風景として描かれていた。過ぎ去っていく時間をとどめ、変わるものと変わらないことを描いたこの作品は、入江の心に強く残った。
その後、コロナ禍前に帰省した入江は、故郷の景色の変化や、自身や両親の老いを感じ、それまでには抱いたことのない感情が湧き上がったと語っている。そんな時、入江の頭に浮かんだのが『踊るミシン』だった。「この思いを何かしらの形にしなければ」と考えた入江が伊藤に声をかけたことにより、この音楽とファッション・漫画を掛け合わせたコラボレーションが始まった。
伊藤は、グラフィックデザイナーとして200冊以上の装幀などを手がけており、イラストレーションも描く経歴の持ち主で、入江が持っているポップな絵柄と色彩感覚、デザイン的な構図、ファッションや漫画の文法を意図的に解体するアプローチなど共通点は多かった。
また、『踊るミシン』では、登場人物たちの間で交わされる意味を成さない会話や、唐突に異なるエピソードにジャンプしながらストーリーが進んでいく作風も特徴の一つ。何気ない日常の瞬間を切り取った断片的なシーンや音楽描写の疾走感、全体的に物語に漂う“死”のイメージ。こうした特色は、毎シーズン、自由な感性でファッションを切り開き、死や破壊のイメージを明るくまとめ上げるジュベナイルホールロールコールに通ずるものがある。
今回のコラボレーションではユニセックスのTシャツ4型9点とロンT1型3点、スカーフ2点を制作。ワンサイズのTシャツとロンTは、シルクスクリーンプリント特有の風合いにこだわるべく、版を重ねに重ねた仕様になっている。
グラフィックは、デザインと現代美術の領域を横断する塩内浩二と白石舞率いる「Cattleyatokyo(カトレヤトウキョウ)」が担当し、スクリーン・トーンの貼られた原画を忠実に再現しました。多義的な物語にインスピレーションを受け、重層的なコラージュを施したグラフィックを制作した。